北朝鮮軍、機動力低下

国防科学研究所「国防技術情報」1998年6月号

 地上偵察航空機(ARL)RC-7B、3機がマルチスペクトル・センサーを搭載して初めて、北朝鮮地域を偵察した。基本任務は、軍、民の移動状況を探ることにあって、2機は東方から、1機は西方から非武装地域内の北方限界線に沿って飛行した。

 数十年間、トンネルを建設して洞窟を拡張していた北朝鮮は、移動型Frog戦術ミサイル、240mm多連装ロケット発射台及び170mm長距離砲を配置していた。南方に向かったトンネルの出口の外における北朝鮮軍の補修、訓練及び部隊の移動姿をRC-7は、観察することができた。トンネルの出口には、攻撃に備えて土を高く積み上げているが、監視装備によりその土塀の背後を盗み見することができた。

 困難な点は、トンネルが土塀の背後で建設されており、航空機に搭載されている他の装備でも観察が不可能である。しかし、砲身の射角により射距離を調整する曲射砲が高い射角で配置されているのが観察された。

 彼らの攻撃に備え、このトンネル内には、何があり、またこのトンネルで何をするのかを把握しなければならず、米国防総省関係者は、明らかにして、各トンネルを通路を探して確認するのに多くの困難があると付け加えた。

 洞窟中は、弾薬等軍需品100万tと燃料100万tを貯蔵できる軍補給倉庫として利用されていた。結論としては、これらの備蓄物資は、長期間生産が中断された状況でも、攻撃に必要な物資を支援する主要補給基地の役割を演じるものである。多数の軍用飛行場には、ジェット機24機を同時に収容できる洞窟がある。また、洞窟付近の幹線道路には、非常滑走路16余カ所を仮設し、軍事基地を支援している。軍事施設の地下化及び戦術の隠蔽のため、数十年を消費したこのような北朝鮮の活動のため、米国としては、標的獲得に大きな問題点を引き起こしている。

 しかし、解決の糸口にはなる。米情報分析家達は、北朝鮮が攻撃的な姿勢を維持する能力を喪失していることを悟った。軍事訓練の回数が劇的に減っており、中国とロシアの援助終結により、燃料、装備補修及び予備部品の不足が深刻化している。さらに、戦時備蓄物資、特に、長期間の保存が難しい食糧の交替が行われていない。

 1980年中盤の水準の即応性を維持しているものと判断される3個の部隊は、砲兵、スカッド・ミサイル大隊及び特殊戦部隊であると、米情報分析家は明らかにしている。特殊戦部隊は、DMZ南方に第2戦線を形成、戦勢に及ぶ比重の大きい牽制勢力として登場することができる。

 長距離スカッド・ミサイルと航空機は、RC-7の偵察領域から免れた北部地域に常駐する。国防情報局において発行した1995年報告書によれば、ミサイルの射距離を効果的に延長するため、前進基地が建設されていると記述されている。

 北朝鮮の攻撃力量を定期的に評価した人々は、万一、北朝鮮が韓国を攻撃すれば、北朝鮮が航空機、対空砲及びミサイルを効果的に使用できる時間は、連合軍が彼らを制圧する前の数時間に過ぎないと言う。実際、脅威となるのは、状況が有利に展開していると判断され、攻撃に合流する100万名の北朝鮮軍が前方に布陣していることである。2つの東部浸透路である開城−[シ文]山及び鉄原渓谷を通して南進し、ソウルに終結した機甲部隊は、阻止線の主要地点を通過するため、稜線を利用して浸透した軽歩兵部隊の支援を受けることができる。

 北朝鮮軍は、DMZに沿って東から西側方向へ第4、第2、第5、そして第1歩兵軍団が配置されている。2つの主要浸透路を支援するための第4歩兵軍団は、第815及び第820機甲軍団の後援により戦力が強化されており、砲兵軍団は、第2歩兵師団を後方から支援する。2個の第425及び第108機械化軍団は、平壌北方の東西海岸に沿って配置されている。

 1,100機の戦闘機中、100機未満が現代式戦闘機としてMiG-23 Flogger15機、MiG-29 Fulcrum15機及びSu-25 Frogfoot35機等により成り立っている。複葉機であるAn-2、300余機は、韓国軍のレーダー網を逃れる低い高度で飛行し、10余個の特殊部隊要員をDMZ南部地域に輸送することが主任務であると知られている。

 米国防総省関係者によれば、北朝鮮は、数量未詳の無人機を開発又は各経路を通して購入しているという情報に接している。これらの航空機は、偵察、標的獲得又は韓国及び米軍のレーダー網を撹乱させるために使用されると判断されている。対空ミサイルであるSA-2、 SA-3及びSA-5は、混合編成され、50余カ所に散在している。各種兵器を地下及び防護基地に収容させた彼らは、連合軍の攻撃によりこれらの防護基地が破壊される前までは、最後の時間ではなく「最後の分」まで闘争するものと米国防総省関係者は語る。

 290kmの射程を備えたソ連製スカッド−Bと480kmの射程を備えた北朝鮮改良型C、500余基で武装している旅団規模のミサイル部隊は、DMZ北方約50kmの地下に配置されている。北朝鮮は、自軍の戦力補強と輸出のため、スカッド・ミサイルを毎月48基生産するものと知られている。

 一旦攻撃が始まれば、地上軍は、劣悪な通信手段を使用、既存の部隊と特殊部隊、そして軍の指揮統制との連結が模索されるであろう。適切な通信手段がない彼らは、敵陣突破に必要な充分な距離の部隊移動が不可能であろう。速戦即決による攻略が霧散すれば、攻撃は停滞し、攻撃速度が鈍化すれば、彼らは永遠に麻痺するであろう。

 問題をさらに悪化させているのは、軍事訓練の欠如である。2年前から、北朝鮮軍の訓練は、ほとんど中断状態にある。定例軍事訓練を含めて、軍の食糧の収穫時期及び各部隊の非軍事的な職務に入るか、多くの訓練を行える冬節期にも訓練が行われていない。96年冬と97年夏の数週間、若干の軍事訓練があったが、過去のような水準の訓練には、ほど遠い。

 訓練が沈滞することによって、最も影響を大きく受ける部隊は、4,000余台の戦車と攻撃砲を保有している機甲部隊である。これらが保有する最新型戦車は、1960年代の技術で生産されたT-62戦車700余台である。劣悪な通信手段と軍事訓練が欠如した機甲部隊が攻撃してくれば、これらをほとんど完璧に制圧することができる。現在は、長時間を要せず、軍需に負担のない道路行軍を除外しては、他のいかなる行動も観察できない。米軍の標準書によれば、北朝鮮は、攻撃する準備が成されていないと記述されている。

(Aviation Week & Space Technology, 1997. 11. 24, pp.62, 63)

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最終更新日:2003/05/25

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